千葉市のエンゼルヘルパー派遣事業に問題あり

  • 2018.04.21 Saturday
  • 13:20

千葉市のエンゼルヘルパー派遣事業とは

千葉市の「エンゼルヘルパー派遣事業」は、妊娠中や出産後間もない時期に、家事や育児の手伝いをしてくれる人がいない方を対象に、千葉市と契約を結んだ事業者からヘルパーを派遣し、身の回りの世話や乳児の育児を援助して子育てを支援する制度です。NPO法人お産子育て向上委員会も29年度に千葉市と委託契約を結び事業を開始しましたが、次年度は継続しないことを決めました。理由はもともと現在の委託費では採算性が低く将来性もない上に、この事業に対する千葉市の姿勢に疑問を感じるからです。

金銭面に関することで言えば、担当者から受けた事前の説明で、事業としてやっていくのは難しいと考えていました。ただ家事支援の訪問は以前から考えていて、少し経験を積みたいと思っていたこと、事業そのものとは別に委託事業で確かめたいことがあったこと、またこれが一番の決め手だったのですが、担当者から「行くのが難しい訪問先の依頼はいつでも断ってもらっていい」と言われたので、取り敢えずやってみようかというような形で始めた経緯があります 。

エンゼルヘルパー派遣事業経費の概要

●事業委託費

  • 1件2時間あたり4,060円

●必要経費

  • 労働時間2時間の人件費
  • 受注や請求等の事務にかかる費用
  • 保険料
  • 訪問先までの往復の時間の人件費
  • 往復の交通費
  • 必要であれば駐車場代
  • 初回訪問の業務15分前の人件費

 

経費の概要(上記)に書いてあるように、訪問には往復の交通費や場合によっては駐車場代もかかりますが、この事業ではそれらは一切請求できません。家事支援の内容でオプションをつけて収入を増やすこともできません。1件あたりの利幅はとても小さく、訪問件数が増えても経費はほとんど減らせないので、数で稼ぐこともできません。

ヘルパーは雇用しなければいけなかったのでは・・

1件あたりの委託費が小さくほとんど利益がでないことは、他の事業者であっても状況はあまり変わらないはずなので、当然どこも訪問件数は多くはないだろうと考えていました。ところが、産後支援者研修会で市議会議員の方が行った千葉市の産後支援事業報告を聞いて驚きました。エンゼルヘルパーの事業には20余りの事業者が登録していて、予想通りそのほとんどで利用実績が少ないのですが、2つの事業者だけが突出して利用件数が多かったのです。

2つのうちの1つは生協が運営しており、ホームページを見ると、家事やペットの世話、子どもの送り迎えなどをお互いにやりあうシステムを取っていて、やる側(応援者)は1時間750円からと掲載されています。最低賃金以下です。雇用していないのでしょう。ホームページに掲載されている番号に電話してエンゼルヘルパーについて聞いたところ、エンゼルヘルパーは1時間800円で、組合員になって事前に登録する必要があるということでした。

うちの担当スタッフによると、委託事業を行うにあたり、千葉市の担当者から保険に加入することに加えて、「訪問従事者は雇用し、最低賃金以上の賃金を支払うこと」と言われたそうです。誓約書も書かされました。特定の事業者にだけ雇用していない人を派遣することを認めているのでしょうか?

 

この件について市長への手紙を通じて千葉市に問い合わせたところ、「誓約書につきましては、登録事業者の皆様に事業形態に応じた労働関係法令の遵守を求めるものであり、(中略)・・・、生協〇〇が派遣するヘルパーは、最低賃金法の適用を受けるものではなく、誓約書に違反するものではないと認識しております。」との回答を得ました。

 

要するに、雇用していれば労働法令に従わなければいけないが、雇用していなければ特に何も制限はないということです。

 

つまり千葉市はエンゼルヘルパー派遣事業で雇用していない人を派遣することを認めているということです。

 

そうなると確かに最低賃金法に違反していることにはなりません。ただこれは、最低賃金以下での労働を是認することになり、その姿勢には大きな疑問を感じます。

 

改めてスタッフが担当者に電話して雇用することが必要だったのではと確認すると、「雇用してくださいと言った覚えはない」そうです・・・。指摘されたので慌ててそういう話にしようって事になったのでしょうか?よくある話ですが。各事業所に確認すれば言っていたかどうかはすぐに分かるはずですけれども・・・。

 

雇用しなくていいとなると、必要経費はどうなるのか。上記経費の概要の中の必要経費のうち、上から4つ目以降の経費がかかならくなります。さらに、時間当たりに支払う金額も最低賃金より低くすることもできます。必要経費を委託費の半分以下にすることができるので事業を続けることも可能でしょう。最初からこういうことだったのですかね。

再委託は禁止のはずなのに

私には明らかに慌ててごまかしを図ろうとしたように見えますが、それはさておき、実はこの担当者の初期の対応には全く問題はありませんでした。むしろちゃんと業務を果たしていたのです。なぜなら契約書には「受注者は、発注者が承認した場合を除いては、委託業務を第三者に委託または請け負わせてはならない」と書いてあるからです。つまり原則再委託を禁止しているのです。雇用しないでボランティアやボランティアのような人を派遣することは再委託です。契約上、雇用している人を派遣することが原則ですから、担当者が雇用してくださいというのは至極当然なわけです。それを泡食って「言った覚えはない」とか言うのは(言わされているのかもしれないけれど)哀れというか、みっともないというのか・・・。

 

もちろん、市長に「再委託は禁止されているはず」と指摘しても、どうせ、『「発注者が承認した場合を除いては」とあるでしょう、発注者が承認しているので問題ありません。』とか言うのでしょう。あほらしいので直接言うのは、取りあえずはやめました。

 

確かに、ファミリーサポート事業のように、子育ての手伝いをしたい人(提供会員)と子育ての手助けをして欲しい人(依頼会員)とで組織を作り、地域において会員同士で子どもの送迎や預かりなどの子育てを支援する相互援助活動を行うものもあります。千葉市はエンゼルヘルパー派遣事業もこれと同じだと考えているのでしょうか?

 

エンゼルヘルパー派遣事業は、事業者が千葉市の委託事業として行うものです。千葉市はこれが本当に、事業者がボランティア、あるいはボランティアのような人たちを集めて家事支援の訪問を行うことを想定した委託事業だと考えているのでしょうか?

これが本当だとしても、あるいは現状合わせの言い訳回答だとしても、どちらにしてもあきれてしまいます。今、国会でドタバタやっていますが、地方も似たようなものだと思わず笑ってしまいます 。

利用者はボランティアのような人が来ることを知っているのでしょうか?

別の問題もあります。訪問の依頼者は、ボランティアのような人が来ることを認識しているのでしょうか?

 

例えばあなたが市営住宅の入居者で、市に何かしらの修理を依頼したとします。市の委託事業者から人が派遣されます。あなたはその修理に来た人が、事業者が再委託したボランティア、あるいはボランティアのような人だなんて思いますか?

 

しかもエンゼルヘルパー派遣事業は、他の民間サービスに比べると格安とはいえ、お金を払って受けるサービスです。ヘルパーは半分ボランティアのつもりで行ったとしても、依頼者も同じようには考えないはずです。

 

ちなみに、千葉市との契約の仕様書には、「事業者はホームヘルパーに対して必要に応じ。資質の向上のために必要な研修を実施するものとする。」「事業者はホームヘルパーに対し、感染症等に関する知識を習得させるとともに、年1回以上の定期健康診断を実施し、健康管理に細心の注意を払わなければならない」とあります。ボランティアの人に対して本当にこんなことまでやっているのでしょうか?スタッフが市の担当者に、その生協が研修をやっているのか聞いたところ、電話でやっていることを確認したそうです。慌てて今回電話したようです。もちろん私たちに対してこれらのチェックは一度もありませんでした。

千葉市は子育て支援に真面目に取り組んで欲しい

そもそもの話、事業契約を結んで事業の委託を受けても、「訪問依頼をいつでも断ってもいい」と担当者が話すことからも分かるように、千葉市はエンゼルヘルパー派遣事業を通して、本気で子育て支援をする気がないのでしょう。

 

お金は使いたくない、だけど他の自治体がやっていて千葉市だけやらないわけにもいかないので、半分ボランティアのような人を使うことを前提に安い値段を設定してやっているのでしょう。

 

その結果、サービスの質も上がらないし、利用者数も増えない。そしてこれはまた、通常の料金で事業を行っている民間事業者を圧迫することにもなります。何か本当に嫌になってしまいます。やる気がないならいっそやらない方がまだマシだと思います。

 

というわけで、エンゼルヘルパー派遣事業の次年度の委託契約は継続しないことにしました。

 

子育て家庭の大半が核家族で、しかも夫の多くが育休などの休みを十分取れない環境の中で、家事支援を必要としている人はかなりいるはずです。ある程度の予算をつけ、必要なサービスを適切に提供できる事業を行っていくことにはとても意味があります。千葉市には形だけ整えてやっている感をアピールするのではなく、内容のある、市民が納得できる施策を実施してくれることを期待します。

 

会報満月2018年3月号に掲載(一部改加筆)

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